森ビル社長が、回転扉はもう使わないと表明したという。 今まであんなものが採用されていたのがそもそも異常だったのだ。廃止表明は当然の発想だと思う。
このニュースは http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20040328AT3K2802I28032004.html に報じられていた。
私も東京近辺のいくつかの場所で回転扉を目にした。私はあれをくぐるのには軽い恐怖感を覚える。私が特別鈍いのかと思っていたが、blogのいろいろなエントリーを見る限り、多くの人がそう感じていたようだ。
そうだろ。そうだよな。
なんであんなものが採用されているのか?
同業他社によると、高層ビルの大きな出入り口には自動回転ドアが使われることが多い。日本では十数年前から使われるようになり、ここ数年は都心の再開発ラッシュで需要は高い。
回転ドアが多く使われる理由は建物の気密が保たれることだ。スライド式だと頻繁に開けば風が自由に吹き込み冷暖房の効率が悪くなる。また吹き込んだ風で上層階に向かって気流が発生し、その圧力で建物内の部屋のドアが開けにくくなる。回転扉の意味については別の指摘もある。
http://kumakuma.exblog.jp/104074
ロビーでひったくり などがあっても、犯人は回転扉を前に、外へ逃げるには時間がかかる。その間に、逃がさず捕まえることができる という利点がある。なるほど。
しかし、どれもこれも管理者側の都合に過ぎない。建物を訪れるお客の立場には配慮が見られない。 だいたい気密性などは普通のスライドドアを二重化すれば充分保たれるのではないか。施工者側が楽をするために本来必要のないはずの危険性をお客に安易に押し付けたのが回転扉だったのだと考えざるを得ない。
さらに回転を自動にしてしまうというのが私は許せない。つまりズボンの人もスカートの人も、女も男も、足の長い人も短い人も、子供も身体障害者も老人も、一切の個人的事情を捨てて同じスピードでビルに出入りすることを強制されるのだ。 こんな非人間的な装備が街中にそうそう他にあるか? バリアフリー・ユニバーサルデザインの精神に全く反している。
センサーがどうとか言うのは対症療法に過ぎない。 どう気をつけても、こういうものにはかならず「死角」ができるものだ。 赤外線センサーを張り巡らせなければ命の保証が困難なような代物をもってくるのが間違っているのだ。 抜本的に回転扉そのものを廃止してしまうのが一番だろう。
【3月30日追記】
- http://tanuki5656.cocolog-nifty.com/20040108/2004/03/niftynewsnifty.html
- http://atasinti.chu.jp/dad/archives/000207.html
- http://ramune.exblog.jp/111102
- http://www.misia-cafe.com/mt/archives/000618.html
- http://takekurabe.cocolog-nifty.com/fp/2004/03/post_36.html
- http://bchan.air-nifty.com/windygerende/2004/03/post_66.html
- http://furodo.cocolog-nifty.com/silly_talk/2004/03/post_20.html
この中で気になったのは、この事件の一義的な責任を保護者にあるとしている主張だ。なかにはマスコミの一方的な報道姿勢という観点と結び付け森ビルやメーカー側に同情しているものもある。
私も、その問題意識は重要だとは思う。しかしながら本件に関してはその主張には賛成しかねる。
多くの人が指摘しているように回転扉は大人であっても使うのが難しい。ある意味、生身のドライバーがコントロールしている自動車よりたちが悪い。そこに子供を連れて入らざるを得ないというシチュエーションである。どんなに気をつけていても「失敗」する可能性が高すぎるシチュエーションである。これで親を非難するのはどう考えても酷である。親のほうこそ森ビルに謝罪すべきだという意見まで発見したがとんでもない見当違いだ(もっとも線香ぐらいあげさせてやってもよかったと思うけどね)。
やはり第一義的に非難されるべきはビルの設計者であり管理運用者である。
【追加トラックバック】
- http://ch.kitaguni.tv/u/1302/%ba%c7+%b6%e1+%a4%ce%a5%cb+%a5%e5%a1%bc%a5%b9+%a4%cb+%a4%c4+%a4%a4+%a4%c6/0000065710.html
- http://ch.kitaguni.tv/u/5039/%bc%d2%b2%f1/0000067228.html
- http://ch.kitaguni.tv/u/663/%bb%a8%b5%ad/%c6%fc%a1%b9%e0%f4%cb%f6/0000075382.html
本エントリーの初出:チャンネル北国TV (2004-03-28)