先日、深田恭子主演で公開された「下妻物語」。この舞台となったのは、わが住処であるつくば市から目と鼻の先にある下妻市である。これは話の種に見に行かねばなるまいと思った。というか、先々月に別の映画を見た折りに流れていた予告編がめちゃくちゃ面白そうで気にもなっていたのだった。
予想以上に面白いお話だった。ヒロイン「桃子」は、どうしようもないヤクザな詰まらない親父をもつ高校生。フランスのロココにあこがれ、全身にヒラヒラのついたお人形さんみたいな浮世離れした衣装に身を包み、日傘をさして、下妻の田んぼの中の道を闊歩している変な女の子である。
あるきっかけで、彼女は「イチゴ」という同じ年の女の子と出会う。彼女は下品でド派手な「特攻服」に身をつつみ、竹槍マフラーを装着した改造50ccバイクを乗り回す暴走族なのであった。
この、まるで接点のなさそうな二人が、お互いバカにしあいながらおかしな友達関係を作っていく物語である。
ショートショートの名手として知られた星新一が、面白い話を作るコツは「異質なものの組み合わせ」だと指摘してたが、この小説はまさにその王道をいっている。なにしろ「ロココ」と「暴走族」である。この組み合わせを思いついただけでもすごい。だがそれだけでなく、頭の悪い下っ端ヤクザである「父」と「桃子」の関係があり、桃子の出自は「河内弁」の文化圏。いっぽう、イチゴの家庭は実はけっこうハイソらしく、両ヒロインともに別の軸での「異質なものの組み合わせ」を抱え込んでいるのである。
これらのミスマッチが生み出す様々なエピソードが小説のクライマックスにおいて全て伏線として生かされているという、なかなか心憎い構成なのであった。
二人は回りのものに一切妥協せず、自分のスタイルをあくまで最後まで貫き通す。互いに相手の馬鹿馬鹿しさ加減をフンと鼻で笑いながらも、しかしお互いを否定もしない。実に大人びていてかっこいい(でもちょっとバカだけど)。女の子が元気な物語というのは読んでいて気持ちがいいものだ。
それにしてもこの原作者はどういう人なのであろうか。洋裁や刺繍、パチンコ、暴走族、それぞれのディテールの描写の細かさは半端でない。その描写がこの小説の中の「ミスマッチ」を非常に現実的なものに見せる効果を与えている(しかし、できれば登場人物にはもっと徹底した茨城のダッペ言葉をしゃべってもらいたかったが……)。
初出:2004年7月15日 北国TV
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