SFの古典的名作の新訳が2本。未見の人はぜひ読んでほしいし、かつて高校・大学時代に読んで感動した人にも改めて読んでほしい。
そして、名作かどうかは評価が分かれるだろうが、貴重なコミックの復刻版が出ている。これも要注目だ。
まずは、ハインライン「夏への扉」。少々時代遅れ感が否めなくなっていたSF小道具の呼称などが現代風に改められた新訳が出た。旧訳版も同時に本屋で平積みになっている。タイムトラベルものにして、いちおうラブストーリーってことになるのだろうか。タイムトラベルや冷凍睡眠や高度オートメーションなどの小道具は出てくるが、ややこしい理屈はなく、むずかしい社会風刺などが入った作品でもない。ただただ登場人物とネコが愛らしい。人間関係などでストレスがたまっていて癒されたい気分の人に特に勧める。
次は、何年か前に当ブログでも紹介したこともある、ネヴィル・シュート 「渚にて」。これも旧訳は会話が随分と古めかしい言い回しだったりして、あまり読みやすい日本語とはいえなかったのだが、新訳はずいぶんすっきりした日本語に生まれ変わっている。東西冷戦下に本気で心配された最終戦争を題材にしているが、この作品も社会批判とかそういうのを主題としているわけではない。否応なく人生の期限を切られてしまった人々が最後に為そうとすることが一貫して淡々と描写される。非合理的ともいえる登場人物たちの姿を通して「生きる」とは何かを痛切に考えさせられる名作である。
最後は「家畜人ヤプー」だ。これをあの石ノ森章太郎がコミックにしていたのである。私はかつてとある喫茶店にたまたま置いてあるのを見て衝撃を受けたのだが、長く再読する機会がなく、残念に思っていたところである。
この作品をご存じない方は、まずは小説の方を読んだ方がいいかもしれない。読了したとき、確実に貴方の世界観は広がります。だが世界を広げる前に貴方の精神が耐えきれず変調をきたしてしまうかもしれない諸刃の剣。精神力の強さに自信のない方にはあまりお勧めはしない。
最近になって『神狩り』を読んだんだけど、いやーなんて若い作品だろ、て思った。もちろん、でも傑作だよなー、とも。
若い時分に読んでたらどー感じたんだろーなー。
あと、typoでしょーが、終盤の
>投了したとき
は「読了」じゃないっスか?