世の多くの人が、有機農法なるものを肯定的に評価し、その作物をすすんで購入しようとしているようだ。だが、とんでもないバカ世界がその背景に広がっていることを私たちは知っておくべきだろう。
【改訂しました】
テレビの健康番組の垂れ流す薀蓄の成果とも思うが、今の世の中、「健康そうな食品」に敏感な人たちがずいぶん増えている。 たとえば朝日新聞のサイトで今月展開されている こういう特集 からもその勢いが伺える。
さて、有機農法が好きな皆さん。あなたはどうして有機農法による作物が体に良いと思うのですか?
「自然」だから? 「合成」の農薬使ってないから?
そこで納得していてはいけないのである。果物でも野菜でも、その辺にほったらかしてして置けば「自然に」腐るが、まさかこいつらも「自然」だから体に良いのだとは思わないはずだ。ジャガイモの芽は自然のものだが毒だというのは常識だろう。このような簡単な論考からも明らかなように、実のところあなたも無意識的には「知って」いるはずなのだ、自然だというだけでは有機農法のありがたみを説明することなどできないのだと。
有機農法で商売している人たちはさすがにその程度のことには気がついている。そしてそのなかでちょっとばかし強力な着想力を持つ人が、そのへんをうまく取り繕う「理論」を発明しているのである。
有機農法と波動
http://noniya.com/juice/nonihado.html http://www6.big.or.jp/~es_plus/yuuki/27/shakai/kakuron.htm http://www.h.do-up.com/home/kohfuku/hadou/これらの情報を総合すると、波動とはエネルギーであり電波であり気力であり物質でもあるという、たいへん多態性に富む代物のようで、しかも「測定器」で測定できるらしい。
これらの説明をすんなり納得できるようなら、はっきり言っておくがあなたはかなりヤバイ。中学レベルから理科の勉強をやり直すとともに、アズキ相場だの幸運の壷などに惑わされて身包み剥がされぬうちに、強力な保護者の管理下に入ったほうが身のためである。
細かい理論的な解説はやめておく。そんなものを使わなくても、これらの主張のおかしさは充分判断できるのだから。「波動測定器」だが、どのようなセンサーを用いて具体的に何を数値化しているのかはどこにも説明がない。根拠不明なまま「結果」がばらばらに提示されているだけ。
彼らの主張のアウトラインを読むと、次のようになる。
「有機農法はイイんです。なぜなら波動が高いからです。 その証拠に有機の玄米は測定値が高いんです。」説明になっていると思いますか。そこのあなた? どうよ?
これでもまだ「自然」を崇拝しますか? 無駄な手間をかけて無駄に高く売りつけられている野菜をあり難がって買いますか?
無論、中には本当にまじめに農学の理論を敷衍し実践し、質の高い品物を供給しようとしている人もいるのかもしれない。だが、スーパーの「有機」表示から、両者の区別がつけられるはずもない。
悪いことは言わない。普通の野菜を普通に食べよ。しかもいろいろな種類のものを食べよ。それが効果的なリスクヘッジとなる。またどんなに本当に「健康的な」食品だったとしても、そればかり食っていればどうしたってバランスが崩れ、災いに襲われることになるのである。
本エントリーの初出:チャンネル北国TV (2003-11-27)
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