遅すぎた処分。 東大助教授が常習的暴力行為で懲戒免職

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この事件は、大学の人事における自浄能力の低さを露呈したものといえる。

http://www.asahi.com/national/update/0316/034.html?2004

ここで言及されている問題の教官の行状については誰しも唖然とするところだろう。免職は自業自得である。

だが、この教官が問題行為を始めてから処分が下るまでに3年を超える年月が経過しているというのはどういうことか。3年といえば、卒研を始めた学部生が院に進み修士号を取って出て行く期間に等しい。最初の被害学生としては随分釈然としないのではないか?

私もずいぶん長い時間を大学構内で過ごしたから、大学の研究室が抱える問題点も多々目にした。人事の硬直性はその最たるものである。いちど常勤の教官になってしまえば、もう事実上、彼もしくは彼女はやりたい放題やれるのである。もちろん大多数の人は真面目に真摯に研究・教育に取り組んでいるのだが、どの部局にも一人か二人は人格的におかしいのが紛れ込んでいて、そういう人を排除する仕組みに乏しいのが大学というところなのだ。

そういう人に限って、表面的な業績はすごかったりする(問題の教官も36歳で助教授だというから、かなり順調に出世街道を登ってきつつあった部類といえる)。だがその研究室内は精魂つきはてた院生の死体累々だったりするのだ。もちろん、事情を知らない人(各部学生はたいていそうだ)にはそんな所は見えない。卒研を始めようと青雲の志に燃えた学生としては、ぜひこの先生に着いて充実した研究生活を送りたいと願う。胸膨らませて研究室に入り……。

大学院生の境遇は厳しい。お金もない。実績もない。コネもない。タヌキ親父とやりあうだけの狡知も持ち合わせない。予算も動かせない。教官の機嫌を損ねたら仕事はできず、学位も取れないまま放り出されることになりかねない。だからよほど理不尽なことをいわれても黙って耐えるしかないということになる。

わたしもいろいろ噂を聞いた。修士論文の提出を終えて、新年度の就職の準備をしたい学生を捕まえて「いまからでも学位認定は取り消せるんだよ」などと脅迫して自分の研究の手伝いをさせるとか、その手の話だ。

こういうことが耐えられなくなって大学を去り、研究生活とは全く関係ない世界に逃げ出す学生もたくさんいる。だが、彼らがどれだけ挫折し夢をたたれ、心に傷を負おうとも、悪徳教官は痛くも痒くもない。目下の者たちの血を吸い取り、のうのうと自分の実績リストを超え太らせ、それを餌に、次の年度にまた別のカモを補充すればいいのだ。

国立大学もまもなく法人化する。成果主義を導入し、特許取得だの起業だのが大いに推奨される方向で変わるようだ。それも結構だが、私としては、もっと将来の人材育成システムの充実という観点から人事を考え直してもらいたいと思う。

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本エントリーの初出:チャンネル北国TV (2004-03-17)

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このページは、kojidoiが2004年3月17日 00:00に書いたブログ記事です。

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