「あさかぜ」の旅も終わりに近づいた。
あさ7時前、広島駅到着から「あさかぜ」の「朝」が始まった。すなわち車内の照明が元に戻され、車内放送が再開される。
下段に寝ている人は起床を余儀なくされる。もう少したつと「立席特急券」を使って途中駅から新たに乗り込んでくる人たちが出現する。この人たちのために、下段は座席化せねばならないのだ。
これも計算に入れて私は上段を選択したのだ。上段ならば横になってゴロゴロしていても顰蹙は買わない。
「朝」になったとはいえ、まだ日の出の20分以上も前なのだ。外は暗く、たまに行き交う自動車もまだライトをつけて走行している。そういう状況で起床を強いられるのはやはり辛い。とくに寝台車ではどうしても通常と同じような深い睡眠は難しいから、なおさらだ。こういうところも旧来の寝台特急の思想の古いところだといえる。
普段は朝食を取らない私だが、早起きしたので腹が減った。こういうこともあろうかと東京駅で買っておいたアンパンをジュースと共に流し込む。ひとごこちついた。列車によっては朝食用の弁当を売る車内販売が乗り込んできたりするのだが、「あさかぜ」ではついぞそんな気配はない。多めに食料を買い込んでおいて正解だった。
ここからは頻繁に停車していく。山陽本線はここから下関までの殆どの区間を海岸線をなぞるように通る。沿岸の街の中心駅にくまなく停車し、少しづつ客を降ろしていく。私のいたコンパートメントで向かいの下段に寝ていた若者は広島で早々と下車し、その上段で寝ていた女性も柳井で居なくなった。私が寝ていた寝台の上段はもともと空いており、これで誰も居なくなった。
「立席特急券(ようするに普通の特急券だ)」で県内を移動しようという人が多少は居るであろうと思ったのだが、いつまでも誰も乗り込んでこない。時間帯が早すぎるせいか? これが小郡(新山口)から先となると新幹線のほうが圧倒的に早いしバスの方が便利だから客はなおさら乗ってこないだろうと思ったが、はたしてそのとおりだった。これが九州乗り入れの特急であればまた状況も変わっていただろう。佐賀・長崎・熊本・大分などの各都市に乗り換えナシでたどり着けるのはこれはこれで一つの魅力だから(特にお年寄りなどには)。
9時すぎ、ほぼ定刻に目的駅である宇部駅に到着。「あさかぜ」ともここで永遠にお別れだ。写真をとり、後姿をよく目に焼き付けてから改札に向かった。
【トラックバック】
http://ch.kitaguni.tv/u/1181/%ce%b9%b9%d4/0000170744.html
午前7時ごろ。山口県岩国市付近から海を眺める。窓ガラスにカメラを押し付けて撮影した。この時期この地方ではまだ夜明け前である(日の出時刻は12月31日の広島において7:21)。天候が悪かったこともあってまだ暗く、スローシャッターでしか撮影できなかった。
9:15ごろ。宇部市。小郡あたりまで地平に雪はなかったのだが、宇部市に入ったとたん雪が深くなった。もうすぐ下車である。
宇部駅ホーム。さらば「あさかぜ」!
本エントリーの初出:チャンネル北国TV (2005-01-10)
コメントする