大昔にVHSにとりためておいたテレビ番組を何とかデジタル化しようと、まずは「復活の日」をVAIOにダビングする。
「復活の日」 とは日本SF界の創成期から活躍している偉大なるSF作家の一人、小松左京によって書かれた「破滅もの」のSF小説である。
米軍がひそかに研究中だった細菌兵器用スーパー病原菌が不慮の事態から世界中にばら撒かれ、世界の国々は数ヶ月のうちに成すすべもなく全滅してしまう。残されたのは、南極大陸の各国基地と一隻の原潜に残された600人あまりのみ。病原体は0℃以下の低温では活性を失うためだった。ところが米ソの防衛システムがまだ活動し続けており、ごく近い将来に核ミサイルが南極大陸を襲うことになると判明する。誰かが犠牲となってホワイトハウス地下のコントロールセンターに入り、システムを停止させなければならない……。
医学・生物学はもとより地震学や軍事工学の知識を駆使し、極限状態を現実味のある舞台に仕立て上げる松左京の真骨頂といえるハードSFの傑作だ。バトルロワイヤルを遺作に先日なくなった深作欣二監督のもと、角川がこれを 映画化 したわけである。
これをビデオに録画したのがいったい何時だったのかも思い出せない。とにかく大昔にテレビ放送していたのを安ビデオで録画したのだ。冒頭で小林稔侍と安達祐実が「具が大きい」とかいうCMをやっているので12−13年前か。これはこれで貴重なので変に編集などせずそのままDVD化しよう。
ダビングしながらちょこちょこ見ていたが、今はすっかり 怪しげなおじさん になってしまった主役の草刈正雄はかっこいいし、ヒロインのオリヴィア・ハッセーはきれいだ。 昔の3倍速で録画した低品質の画像でも南極の氷山の間を原潜が進むシーンとか実に美しい。純粋SF者である私は、氷をバックに原潜のスクリューが回っているシーンが出てくるだけで感涙だが。
しかしSF者は日本では少数者なのか、それともストーリーにこめられたメッセージ性が理解できない者ばかりなのか。たとえば次のような感想にがっくりさせられるわけなのである。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=86183
女性は子作りマシ−ンではありません。 投稿者:たまきち投稿日:2005-02-04 02時10分15秒なんという間抜けな感想だ! あのさー、理解できなかったかもしれないけど、地球人類滅亡一歩手前という極限状態の話なのよ。文化も文明も常識もみんなチャラにされてしまって、さあどうしましょうって話なのよ。内容云々より、女性の取り扱い方が最低です。 南極基地に生き残った800人余りの中で女性はたった8人。 その8人が全ての男性を受け入れて、子作りに励むなんてこんな 設定、よく問題にならなかったよ。全く。 話が進むにつれて、女性がみんな子供を抱っこして、男どもが 「この子は俺に似ているから、自分の子に違いない」なんて話しで盛り上がってるし。 残った人類で南極政府を作って、今後のことを話し合う場で意見 言ってるのも男ばっかりだしね。 ちょっと女性をなめてるね。
そのストーリーに対して感想がこれかよ。
よく見れば日本映画にもいいものはたくさんあるのに、肝心の日本人たちが、こういう本質を見ない批判で「日本映画=ダメ」を公式化してしまっているんじゃないかと思えた感想であった。
本エントリーの初出:チャンネル北国TV (2005-06-19)
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