定吉七は丁稚の番号

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007シリーズのパロディなのだが、唯のウケ狙い小説ではなく、なかなかどうして本格的なアクション小説である。

以前から読みたいと思っていた本郷隆作「定吉七番シリーズ」の第一作「 定吉七は丁稚の番号 」をようやく古本で入手した。

主人公は「定吉七(セブン)」というコードネームを持ち、大阪商工会議所秘密情報部員として暗躍する腕利きのスパイである。対する敵は、関西を否定し、神田明神を崇め、東日本から全ての関西系企業を駆逐せんと暗躍する秘密結社 NATTO

さっそく第一話「ドクター・不好(プーハオ)」を読了した。敵は湘南・江ノ島に秘密潜水艦基地を建造しつつある謎の中国人・プーハオ。定吉七は拳銃の代わりに「富士見西行」なる業物の包丁を武器とし、敵方の下っ端戦闘員(全員が御宿出身の千葉県人で埼玉県人に変装している)を相手に大活劇を演じる。

いうまでもなく映画で展開されるおなじみのストーリー・場面の焼き直し。だが、単に大道具を日本のそれに置き換えただけでない。情景描写を通じて、この小説が書かれた当時(1985年刊行)のチャラチャラした風俗を皮肉り、ダサイタマなどといって「田舎」を馬鹿にしたり妙に都会人ぶったりすることの多かった当時の関東人を毒々しく馬鹿にする。その毒が小気味よい。

また戦闘シーンや武器の描写が大変リアルだ。それも道理で、作者はもともとアフガン内戦の取材経験などを持つジャーナリストだという。なにやら銃器関連の大スクープをものにしたこともある人物らしい。そのようなバックグラウンドあってのパロディなのである。やはり一級品を世に出すには思いつきだけではダメなのだ。


本エントリーの初出:チャンネル北国TV (2005-07-23)

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このページは、kojidoiが2005年7月23日 00:00に書いたブログ記事です。

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