SFパニック映画として素晴らしい出来だ。ぜひ観るべし(ただし大人のみ)。
原作はSFの父ともいわれるH.G.ウェルズによる古典中の古典。SFの歴史を解説する上で避けて通ることのありえないエポックメーキングな小説といえる。全ての「侵略もの」SFの元祖といえる作品なのである。
舞台こそ現代アメリカ合衆国に移されているものの、三本脚の敵戦闘器械が街を蹂躙し市民たちを虫けらのように殺していく情景といい、結末といい、主要な設定はほぼ原作に忠実。逆にいえば、100年を超えてもなお通用する大道具・小道具を何ら先達がない状況下で創造したウェルズはそれだけ偉大だったのだ。
こんなに心臓をバクバクさせながら見た映画は久しぶりである。まず敵のおどろおどろしい殺戮マシンが姿をあらわすところで、先の惨劇を予感してアドレナリン濃度上昇だ。つづいて街は地獄絵に変貌し、背後でビルが裂け高速道路が倒壊し人間が一瞬にして肉塊に変わり蒸発し、CGが駆使された様々な惨劇が次々展開される。そんな絶望的状況をなんとか生き延びようと逃げ回る主人公たち。その周りで死んでいく人々、反攻しようとする人々の群像が描かれる。
しかし、この映画が原作をただなぞっただけで新しさがないなどと一部でこき下ろされているという。見当違いの批判だな。相手は偉大な古典なんだから、ヘンな翻案など必要ないのだ。それに離婚・別居が珍しくない現代的家族における人間関係だとか、最強だったはずのアメリカのビル群を一瞬にして崩壊させたテロへの恐怖だとか、原作の枠組みをきっちり生かしつつちゃんと今日的な問題も織り込んであるじゃないよ。文句の付け所のない出来の良いSF映画だと思う。未見の人はぜひ映画館に足を運ぶべし(ただしかなりエグいシーンもあるので子供は留守番)。
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宇宙戦争@映画生活
本エントリーの初出:チャンネル北国TV (2005-08-14)
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