何気なく書店を訪ねて、日本沈没の第2部が発売されているのを知った。30年ぶりの続編である。
著者は谷甲州という、ハードSFの名手。確かに作風には小松左京に似ている部分があるかもしれない。
あとがきを読んで知ったのだが、小松左京は本当は日本の国土が崩壊する様子ではなく、世界に散らばった後の日本人をこそ書きたかったのだそうだ。しかし当時は「序章」部分だけでも膨大な手間をかけてしまい、出版や映画とのタイアップ話が進んでいたような事情もあって第一部完という形でまとめざるを得なかった。その後なかなか先を書く機会が作れず、ようやく谷甲州という担い手を得て、今回第2部発表となったわけだ。
小説の時間のほうも30年ほど進んでいる。日本が沈没したこと以外は現実世界の変化を反映した設定になっており、ソ連は崩壊し、中国は力をつけ、人々はインターネットで情報交換している。
日本は国土は失ったものの世界中で苦労しつつも生きており、総人口は沈没時のそれを大きく超えている。政府も存続しており、皇室はスイスで、外務省はロンドンで、農水省はオーストラリア・ダーウィンでと、各国の領土を間借りしながら頑張っている。
内閣は旧日本国の領海に人工島を作って「国土」を再建しようとする計画している。一方、日本人の優秀な技術者陣はコンピューター技術を大きく進歩させ、世界の気象を高精度に予測できるスーパーシミュレーターを開発するに至っていた。その技術供与でさらなる国際的地位向上を図ろうと内閣はプッシュするが、その過程で、世界を予想もしなかった厄災が襲う可能性が浮上してくる。
いやはや。さすがに谷・小松コンビはやってくれる。まさかあれをあれに結びつけるとはなあ。
旧作もそうだが、SFの下敷きを用いながら、見事にポリティカルフィクションを成立させている。いまこそ、日本人はこの作品を読んでみるべきであろう。
勢いを借りて、今は旧作を読み返しているところだ。これはこれで今読んでみると執筆当時の時代背景がうかがえて興味深い。
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