安倍首相肝いりの「教育再生会議」のメンバーが決まったそうだ。その末席に連なるワタミ社長、渡辺氏のインタビューが先日の朝日新聞に掲載されていて、大いに彼は「教育バウチャー制度」をプッシュしていたのだが……こんなのが「再生」させる教育ってなんなのかね。
バウチャー制度って、要するに金絡みの人気投票をやろうって話。人気によって学校に落ちる金が変わってくるから、学校に競争意識が生まれて教育の質が向上するんだという。
だがハッキリいって、今のオトナの大部分に、教育のほんとうの有用性をまともに評価することなどできるわけがない。せいぜい、短期的で近視眼的な指標、たとえば有名上級学校への進学率とか、そんな数字を比較するのが関の山であろう。それとも、スポーツ施設が充実しているとか、補習をたくさんしてくれるとかか?
そのような表層的な要素から生み出される「人気」をバロメーターにして計れる教育の質って何なのだろう。
社長の専門である居酒屋なら話は簡単だろうよ。要するに客が喜ぶ酒と肴を提供できるかどうかが全て。単純な論理だ。だが、教育っていうのは基本的に教育を受けさせられる側を喜ばせるために行うものではない。それどころか、首につけた縄を引っ張ってでも、教え込まねばならないものを押し付けるということをやるものである。文句を言われようと不平をぶつけられようと、苦い薬を口の中に押し込んでやることを躊躇してはいられない場。学校とはそんな場所であろう。
そんな場所に人気投票がそぐうはずがない。そんな本質的な違いも弁えず、学校を居酒屋と同じように考えて、教育を受ける側の人気投票で学校を活発化させるんだと無邪気に主張するこのマヌケな社長が、教育再生会議のメンバーなのだという。先が思いやられるね。
だいたい安倍首相は「うつくしい日本を作るための教育の再生」を実現させたくて、「国のために自分を犠牲にすることもいとわない姿勢」とかを教え込みたいんじゃないのか? そんなことを生徒に押し付けようとする学校が人気を獲得できると本当に信じているのだろうか? まあなかにはそんなウヨな親もいるだろうが、大部分の人間は国を美しくするために自分たちが痛みに甘んじるなど受け入れてはいないはずだ。その点で、彼が教育バウチャー制度をプッシュするなど全く矛盾もいいところなのだが、お坊ちゃんにはそんなことも分からぬようだ。やれやれである。
いくら時代が変わっても,本当に教えなければいけない事はそうころころ変わるはずはないのです。「教育のほんとうの有用性をまともに評価すること」が出来ない人々にはそこら辺のことが分からないのでしょうね。