やっぱりプレゼンだな

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久々の更新だが、今日は長いよ。

例の「仕分け作業」は、我々の業界(生物学研究業界)にも近年ない大きなインパクトをもたらしている。

主流の意見は「あいつら何にもわかってない。けしからん」というところである。この評価は半分程度は当たっていると思う。たしかにあの議論は乱暴すぎるし、このプレゼンが類似事業への評価の基調になるとあっては、当事者としては、ちょっとまて冗談じゃねえよと言いたくなろうというものだ。

しかし、録音を良く聞いてみると、仕分け人の意見には、もっともな疑問であるといわざるを得ないものも多少なりとも含まれていることも確かだった。やはり一次情報を実際にチェックしてみたいとわからないものだ。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm8793858

スーパーコンピュータの話。
行政刷新会議WG「事業仕分け」2009年11月13日第3WG、事業番号3-17
(独)理化学研究所(1)次世代スーパーコンピューティング技術の推進

http://www.mediafire.com/?tzmzznuyzxm

行政刷新会議WG「事業仕分け」2009年11月13日第3WG、事業番号3-18
(独)理化学研究所(2)大型放射光施設(SPring-8)、植物科学研究事業、バイオリソース事業

残念なことは、どちらにせよ文科省や理研側の担当者のプレゼンが稚拙すぎることに尽きる。


  • どうでもいい過去の会議の経緯などをいつまでもダラダラしゃべっている。
  • 「研究に必要なんだ」以外のアピールポイントが見えない。そして、仕分け人たちは研究の必要性自体は否定していないので、議論が成立していない。
  • そもそも質問の意味をきちんと理解できていない。質疑の中で同じことを何度も繰り返ししゃべっている。質問の内容が変わったということは、別の種類の返答を要求されているということだという簡単な判断もつかないのか?

スーパーコンピュータの話に関しては、仕分け人側の先生にも何を言いたいのか意味不明かつカツゼツ不明瞭な変な人が交じっていたが、それにすら切り返せないのでは、口達者な民主党議員(与党としてはまだアマだろうが、それなりに弁舌に関しては鍛えられたプロだ)に太刀打ちできるはずがない。文科省の担当者も、これまでの日常業務においてはそれなりに仕事のできる人だったのかもしれないが、余りにも応用力がなさすぎた。プレゼンと言っても、常識の9割を共有している相手に向かっての「議論」についてしか経験を積んでいなかったのだろう。これはおそらく研究者あがりの理研の担当者にしても同じだ。それではやっていけない世の中なのだということが白日にさらされた点ではサジェスティブなイベントだったと言えるだろう。

研究者たちの神経を最も逆なでしたのは、蓮舫議員の「2位ではだめなのか」発言であろう。駄目に決まってんだろ、一位でなければゼロなんだよ、なにもわかってねえというのが批判の主流である。だが、録音を聞くと、彼女のニュアンスは少し違う。2位に甘んじたとしてもそれなりに得られるものはあるのではないか、それを拾おうという発想はないのかという問題提起なのだ。これはただやみくもに一位のみにこだわる「研究者」のそれよりはずっと実際的で賢い発想とはいえないか。仮に目論見どおりに世界最速のコンピュータを作れたとしても、かつての地球シミュレータがそうであったように、すぐにもっと上位の計算機を国内か国外かは知らないが誰かが作るに決まっている。5年・10年と一位の座が守りぬけるとは考えにくく、それ自体は一時的な果実でしかない。では他に何が得られるのか? 当然の疑問ではないだろうか。だがわれらの弁護側は、この意図を理解できていない。正面切って回答を示すこともできなければ、それでも一位を取ること自体に最大の意義があるのだということを端的に説明して見せることもできなかったのである。とにかく研究の幅が広がるんですの一点張り。これでは、なにがなんでも八ツ場ダム建設中止反対を連呼する東京千葉埼玉の馬鹿知事どもを批判できないではないか。

仕分け人の発言には、他にも食いつけるポイントがいくつもあった。バレーボールでいえば、ただちに相手コートにアタックをたたきつけられるボールがいくつも上がっていた。なのに担当者ときたらどこにボールを放ればいいのかもわからず、自コートでドリブルをやらかして反則で連続失点した挙句、3セット連取されて敗退というのが今回のパターンである。まったく歯痒くてならない。

とはいえ、民主党の運営は、こんなやり方で本当に大丈夫なのだろうか。

猪瀬直樹はこう言っている:


http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20091116/195526/?P=4
「無実の事業」も断罪される、まるで「紅衛兵」

 事業仕分けの様子を見て、「まるで紅衛兵だ」という印象を受けた。このままのやり方なら仕分け人は、主計局の紅衛兵である。中国の文化大革命では、無実の人たちが断罪された。事業仕分けの対象事業のなかには、たしかにムダな事業もあるけれども、無実の事業もたくさん含まれている。それらを一緒くたにして、1時間の即決人民裁判で断罪していくのだから、これは民主主義の否定である。

猪瀬氏は医療関係の「仕分け」について怒っているのだが、基礎研究に関しても同じ批判が可能だ。付け加えれば、「科学未来館」の業務に関して「採算性」を問う主計局は大馬鹿である。担当者には腹を切れと言いたい。科学技術立国としての底上げを図るには、20億・30億円程度の持ち出しは安い買い物だというべきである。ただし、おかしな中間法人を整理すべしという指摘は(毛利氏も同調していた通り)、良い指摘だ。「採算性」の向上が、すべて中間法人と天下りのロートルどもの抹殺によって成し遂げられることを願ってやまない。

今後の民主党がどこに行こうとしているのか、そろそろこちらも冷静に考察を始める必要があるだろう。鳩山氏や岡田氏の冷静さが前面に出てきてくれればいいが、小沢一郎の怪しげな言動などみると、かつてワイマール憲法を捨てて前代未聞の悪行に走ったナチスの二の舞にならぬとも限らない危うさも感じる。

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このページは、kojidoiが2009年11月18日 21:56に書いたブログ記事です。

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