映画「はやぶさ/HAYABUSA」を観た。

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久々に川崎の109シネマズに行き、映画「はやぶさ/HAYABUSA」を観た。
今年は「はやぶさ」関連の映画が三本も発表されるそうだが、これがその先陣である。

はやぶさは説明するまでもないだろうが、昨年の日本のなした偉業の一つである。無人探査機を打ち上げ、何十億キロも彼方に存在する正体不明の小惑星に着陸させ、砂を採取して、なんと地球までそれを持って戻ってきたわけだ。科学技術上の大成果であるばかりでなく、いくつもの
アクシデントを様々な工夫と不屈の精神で乗り越えていった道程はドラマチックで、なるほど映画向きである。

映画の感想を一言で言えば「丁寧に事実を追った」映画だった。本物そっくり(JAXAの全面協力のもと、研究所内の本物の部屋を使って撮影されたシーンもある)の研究所や管制室の風景、こういう人確かに大学にいるよねと思わせるリアルな登場人物たちの描写など、この素晴らしい業績をリスペクトしようという制作陣の気概が伺え、たいへん結構だった。

特定のモデルを持たないヒロイン(複数の広報担当の女性スタッフをモデルに合成されたキャラクタだそうだ)を設定したことも功を奏している。大学院を退学せざるを得ず、しかし学業への思いは捨てがたく、学費や生活費を自分で稼がざるを得ないという、これまた胸が痛くなるほどリアルな人物設定。こういう設定にしたために、竹内結子演ずるヒロイン水沢恵はこのプロジェクトの研究の最先端から広報までの様々な部分に違和感なく直接関わることができ、観客もヒロインの目を通して様々な疑似体験ができるというわけだ。もっとも、講演会場で出会い数分会話しただけの人物をいきなりスタッフに抜擢するとは、的場教授もずいぶん大胆な人物ではある。

随所に印象的な場面があって、たとえば佐野史郎演ずるプロジェクトマネージャー川淵が、管制室に集まって盛り上がるスタッフたちを置いてひとりオフィスのパソコン画面を通してはやぶさの最後を見つめるシーンなどは圧巻だった。とはいえ、全体的に史実を追うことにウェイトが置かれていて、人物の掘り下げはさほどでもないという印象だ。業務分担者たちの生々しい姿をもっと見せて欲しい気がしなくもなかったが、まあそれをやると二時間半の映画では収まらないか。

ちょっと違和感があったのは、高嶋政宏演ずるカメラ班のチーフである坂上の描写だ。彼は期限付き職員で、プロジェクトの半ばで退任して研究所を去ることになるが、ヒロインの恵はそれを聞いて「プロジェクトを最後まで見届けられないなんて」と驚いて涙するのである。しかしこれはちょっと変だ。仮にも何年も現場に身をおいて冷や飯を食ってきた身である恵が期限付き職員の実態を知らないわけがない。驚くとすれば、彼がチーフという要職を任されながらパーマネントの職員ではなかったという点に対してか、的場や川淵がなぜ彼を別プロジェクトで雇うなどして契約更新しなかったのかという点についてであろう。そこまで描写してくれれば、ついでにいわゆる高齢ポスドク問題を世に問うこともできたのになあ。

それでも、大変よくできた映画であることは間違いない。研究現場を丁寧に描写してくれたこういう映画出てきたことを喜びたい。

映画公式サイト:http://movies.foxjapan.com/hayabusa/aboutthemovie/index.html

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このページは、kojidoiが2011年10月16日 11:38に書いたブログ記事です。

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