小泉改革を一刀両断! 痛みに耐えても国民は幸せになれないそうである。 なぜなら、小泉改革の真の首謀者は、アメリカ式「勝組」に洗脳され、日本を弱肉強食社会に改造し、自分だけが「一握りの成功者」の一員として社会を牛耳ろうとしているからだという。
なかなか刺激的な問題提起である。
第1章は経済学的な議論。小泉戦略の誤謬を かつての世界恐慌時の事例なども引用しつつ 解説している。
経済学は素人である私だが、自分なりに要約すると 以下のような筋立てだ。
- 財政を改善するにはデフレを止めなくてはならない。
- デフレを止めるには需要を増やすか供給を減らす必要がある。
- 小渕内閣は前者、森や小泉内閣は後者の戦略をとった。
- 供給を減らすには、総労働時間の短縮が有効だが、小泉はその方法として労働者一人あたりの労働時間を減らすのではなく、「企業をつぶす」ことで実現しようとしている。
- 当然余剰人員が出る。それは新規の生産力の高い職場に再吸収されるはずだったが、まったくそうはならなかった。
- その結果、国民の財布の紐は固くなった。たしかに供給は減ったが、需要も減ったため、事態はまったく好転していない。
ところが、既に70年代の不況下のアメリカの事例で、 こうした「創造的破壊」は必ずしも起こらないことが確かめられている。実現したのは「非創造的破壊」でしか なかったのである。
また、しばらく前に深刻な経済危機に見舞われた韓国が 「V時回復」を成し遂げたことは良く知られているが、 これも「需要拡大策」によるものだという。
そうだったのか!
私は財政支出の拡大など「絶対悪」という漠然とした 思い込みを持っていたが、それは例の高速道路問題 などに引きづられた偏った考えであったのだ。高速道路の作りすぎは馬鹿馬鹿しいが、それは「頭の悪い財政の支出」の例であるというだけで、財政支出自体が根本的に悪いと考えるのは誤り。需要と供給は密接に絡まっており、経済を考えるときは両方を同時に考えなければならない。 ものごとは輪廻するということを忘れてはいけないのだ。
それにしても著者の論旨は明快だ。国民に労働の機会を与えるという憲法の理念を忘れ、毎年1万人以上の国民の命を奪っているに等しいと、小泉に対する批判は手厳しい。
反対意見もぜひききたいところではあるが、私としては 近く実施の総選挙で自民党にだけは投票すまいという決意を新たにした次第である(一度もかの党に投票したことないけどね)。
「生き抜く方法」の部分は項を改めて紹介したい。
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本エントリーの初出:チャンネル北国TV (2003-11-01)
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