いきあたりばったりに宿を探す方法（田舎編）

ビジネスで旅行する際にはスケジュールがかっちり固定されていることが多いから、事前に利便性の高そうなところに予約を入れておこうということになる。私も最近はそういう旅行ばかりだが、本当に楽しい旅行というのは、そこにいってみるまで何に出会えるかまったく判らないというアドリブなミッションであると私は思う。

高名な温泉宿に苦労して予約を入れ、新幹線やバスのキップを全部そろえ、安くはない宿泊料金を家計簿をにらみつつなんとか用意し、満を持して決行する旅行も悪いとはいわない。だが、「その晩の宿はその日の夕方に探す、しかもできるだけ安く」という行き当たりばったりな旅行をこそ私としてはお勧めしたい。非日常を楽しむべき旅行で、いつものウィークデイと同じく時間に縛られた旅行なんてつまらないだろう。或る意味非常にもったいないと思うのだ。

で、泊まり方だ。

これは田舎と都会ではかなり戦略を変える必要がある。宿泊施設の種類が根本的に異なるし、情報源の整備状況も違う。また、なによりも「楽しみの対象」が違うように思う。

まずは、田舎での泊まり方について述べよう。これも細かく言うと「観光地」と「非観光地」では微妙に異なる。観光地の場合、宿探しのスタート地点はそのエリアの中心となる駅である。まずは駅をでて広場に出ることである。ときどき駅構内に「JRの観光案内」があったりするが、これは後回しでよい。またJTBは存在していてもパスしてよい（もっともJR民営化後JTBはどんどん駅の外に追い出されているが）。JTBは基本的に高い宿しか紹介しない。

広場に出たら（たいていはバスかタクシーの溜まり場だが）、周辺の建物を見渡してみる。おそらく高い確率で「観光協会」が出店を出している。あくまでもその場所の「市町村名のみを冠している」ことを確認すること。場合によっては「温泉旅館の出店」があたかも町の出先機関のような顔をして案内をしていることがあるが、これは避けたほうが良い。これは誘導するべき宿が最初から決まっているのだ。高かろう悪かろうの宿に誘導される危険がある。あくまでも「本物の」公的機関を頼ること。

さて、出店を見つけたら、受付に行って、そこにいるお姉さんだかおじさんかに、できるだけ具体的に希望を伝える。このとき単に「安いところがいいんですぅ」では、工夫がなさ過ぎ。

「土地のうまい魚を食べさせてくれるところがいいんですが、宿は素泊まりでもいいですが近くにイイ料理屋があるところはないですか？」

「ここに来るのは初めてで土地勘がないんです。明日は早く出てXXに行きたいので、駅に出やすい場所がいいのですが」

あまり土地に詳しくないことを伝える。その土地固有の何かを楽しみたいと希望している。こういったことをアピールすることが重要だ。

係員だって人の子であり、おそらく子供の頃からずっとその土地で暮らしてきた人である。はじめて当地にやってきた旅人がその土地に強く興味を持ってくれているとわかれば悪い気にはならない。そんな人には出来るだけいいところを見てもらおうという気になってくれるはずである。これはもちろん、あなたの希望するところに合致するはずだ。

これで多くの場合は宿を確保できる。

だが、週末だったり祭りの時期と重なったりしていると、すでに周辺の宿は予約でいっぱいで観光協会の威光をもってしても部屋がとれないこともある。 こういう場合でも、その駅の周辺で宿を取るのはあきらめ、列車で2、3駅先の「マイナーな町」に移動してしまい宿を探すと意外に空いているものである。こういう臨機応変な対応も旅の楽しみの一つというものだ。

というわけで、次は「非観光地な田舎」での宿の探し方である。

本エントリーの初出：チャンネル北国TV (2003-12-07)