対話というのは難しい。特に、あまりにも知識背景や視点の違う人間との対話は。しかし難しいからといって避けては通れない問題だ。
まず、これを読んでいただきたい。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/fs/mail_dsp.jsp?mail=25特に、中段の" 【FROM WEBMASTER】◆研究者と消費者の良き信頼関係構築に期待"というコラムを。
これは日経バイオテクノロジージャパンという、バイオテクノロジー関係の専門家向けの総合サイトが提供するコンテンツの一つであるFood Scienceメールマガジンのバックナンバーである。
遺伝子組み換え食品への風当たりが一弾と強くなる一方で、一般消費者の、遺伝子組み換え食品に対する科学的に正しい理解は一向に進んでいません。最終的にその食品を選択するかしないかは、ステークホルダーとして最たる存在である消費者です。ただし、その消費者が選択しようにも、研究者側がシュリンクしたために選択肢を提示できなければ、選択のしようがありません。遺伝子組み替え問題では消費者団体の言動を何度か私は非難してきた。しかし、研究者側も、「情報を人に伝える」努力が充分だったか反省しなければならないと思う。
これまでの(おそらく今も)研究者の研究情報発信といえば、業界で一流と見なされる学術雑誌に論文を掲載すること、ただこれしか考えられていなかったといっても過言ではなかった。業界紙だから、業界以外の人が読んでもテクニカルタームだらけでなんだかよく分からない。その結果として、「一部のアタマノイイ連中がなんだかわけのわからないことをしている」との漠然とした観念(=不信感)を人々に植え付けてきたのではないか?
だがそれを問題視していた現役研究者はごく一部だけだった。
私は5ねんほど前、とある掲示板(fj.sci.bio)で、もっとわかりやすい学会発表をという問題提起をしたことがある。いの一番の反応は、東大の若い先生からのものであった。いわく、 いちいちそんなこと考えてられるか。俺たちは論文書くので精一杯なんだ。そういう暢気な発言をやらかしているオマエは論文ちゃんと書いてるのか?
かなりしらけたのはいうまでもない。だが残念なことに、そのスレッドでその後続々つづいたのは、学術論文の評価方法の話ばかりであった。ようするにそういう視野しか皆もっていなかったということ。またそうでなければ研究の現場で生き残れず、弾き飛ばされていたのだろう。
もう一つの問題は、研究者の「思い上がり」とでもいうか。自ら試験管をふり、なおかつ学術論文に筆頭著者として名前を連ねる立場の人間以外を「落伍者」とみなす風潮が今もあることである。この狭義の「研究者」に就任できなかったものは、傷心のうちに、本当に「研究とは無関係な世界」に飛び出してしまう。
そんなわけだから、研究者と一般人を結ぶコミュニケーター役が勤まる人が一向に育たないのだ。
さて、いまや遺伝子組み替え不信論のほうが圧倒的にデファクトスタンダードとなってしまった。北海道・茨城などで遺伝子組み替え作物の野外栽培実験が禁止されようとしている。研究者側が蛸壺から出ようとしなかったために、今や本当に蛸壺の蓋が閉められてしまおうとしている。(参照: http://ch.kitaguni.tv/u/1181/%b2%ca%b3%d8/%b5%bb%bd%d1/%b0%e4%c5%c1%bb%d2%c1%c8%a4%df%c2%d8%a4%a8/0000048271.html )
状況は危機的だ。 そこで最後にひとつカンフル剤になりうる具体的プランを述べてみたい。 方法はシンプルだ。
農水省は、みのみんたを広報担当に雇え!
私はかなり本気である。彼の番組は科学的には問題山積だが、研究者が欠かしている重要な技術を彼が持っていることも確かなのだ。
本エントリーの初出:チャンネル北国TV (2004-02-15)
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