北海道における遺伝子組み替え作物の屋外栽培が禁止されようとしているらしい。
「根拠のない規制強化は北海道の危機!!」
と題して、放送大学北海道学習センター所長 冨田房男氏が 日経Biotechnology Japan から配信のメルマガにて警鐘を鳴らしている。
富田氏の危惧は http://www.pref.hokkaido.jp/nousei/ns-rtsak/shokuan/conf.html にあるとおり、 食の安全・安心条例(仮称) なるものを制定しようと画策している北海道農政当局の動きがあることに起因するものだ。
当局は、 「北海道の安全・安心な食を考える会」なるものを立ち上げ、幅広く意見を求めるポーズを作っているものの、その人選はひどく偏っていることを彼は以前の記事で指摘していた(この会の議事録が こちら にある)。
今回の批判はさらに鋭い。まずは、有識者を集めた「検討会」が出来レースであるとの指摘だ。
第一回検討会では、入り口の議論と思っていたが、何処でどうやったのか勘ぐりたくなるほど座長と道庁は、殆ど一致した発言だ。つまり、「多くの道民が不安をもっているから規制をしなければならない。」というのがどうも大きな理由のようだ。
ここで座長及び道庁がよりどころとしているのはアンケートの結果のようだ。しかし、「どれだけの回収率があったのかも、また母集団がどうであったのか。」の説明もなく、「アンケートに答えた人の8割が不安を持っている。」というべきところをいつの間にか「道民の8割が不安である。」とすり替えている。
しかも、この検討会は、条例を作ることを前提とし、しかもそれが任務であると何度も繰り返し説明をし、その上座長もそのことであるのならば引き受けますと公言して、席についていることだ。道庁は、通称「食に関する条例」の中に埋め込んで組換え作物を栽培させないように巧妙に仕組んであることを以下に示すことから読みとって頂きたい。
つまり細切れの委員会を作り、それぞれに予め決めた役割をやらせ、全体像は知らしめないでおくことだ。こうすることで、全体像を道庁はうまくまとめるつもりのようだ。さて、そもそも、この条例案のどこが問題なのかといえば、前述の「骨子」にあるとおり、組替え作物の野外栽培を「生産者や消費者の理解が得られない限り」行なわせないとしている点にある。
研究は阻害しないので進めて欲しいと言うことのようだが、以前にも述べたように実質は禁止に等しい。こんなに強引にことをすすめる道庁は、北海道の活力を削ぎ地域経済を衰退させるものだ。
バイオ産業関連において出口のない研究は無駄だ。研究者及び研究資金は道外に流れることは明白で、現実に起こってきている。いくら「入り口」の研究が進められても、成果として出てきた作物の実地テストが出来ないのでは何にもならない。「安全性」を確かめる手段そのものを封じようとしているに等しい。研究は「今すぐ」やることが大切だ。途中で中断した研究を何年か後に再開するというのは(特に特許だの産業化だの金儲けだのが絡む場合)、実質的に不可能。その研究は絶滅させられるに等しい。
最近、東大のある研究室が遺伝子組み替え研究の実質的な凍結を余儀なくされた。東京郊外の圃場に組替え作物を植えることに地元民が反対したからだ。
そこで、皆様への御願いです。どうかこのような大昔のやり方で一方的且つ拙速な規制強化を阻止するために現在求めているパブリックコメント欄を御覧になり、この無茶な時代錯誤なやり方を糾弾するようにコメントを沢山出して下さい。皆さん行動を起こして下さい。今北海道で起こっていることは根拠のない規制強化による北海道の活力を失わせる「恐ろしい危機!!」だ。日本の危機でもあるし、科学の危機でもある。「沈黙は金、雄弁は銀」 はもう止めましょう。北国tvには北海道在住の人が多い。みなさんはこの問題をどうお考えだろうか。
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- http://ch.kitaguni.tv/u/8353/%bb%fe%bb%f6/0000157981.html
本エントリーの初出:チャンネル北国TV (2004-07-07)
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