なにやら厚生労働省がナンセンスな「犯人探し」を試みている模様。「当事者」としては捨て置けません。
http://www.asahi.com/national/update/0815/003.html
30〜40代の独身男女は「親孝行」「恩返し」などの伝統的価値観が低く、子どものいない中年既婚者は社会への要求が高い――。厚生労働省は、こんな少子化に関する意識調査と分析をまとめた。
「親孝行が大事」は若年独身男性で63%、同女性で81%が選んだが、中年独身男性は59%、同女性は65%。「恩返し」でも同様の傾向で、独身中年層は伝統的価値観が低いと結論。ただ、同じ中年層で、独身者と子どものいる場合との比較はしていない。
「国や社会が良くなってこそ個人が幸せになる」を選んだのは、子どものない中年既婚男性で46%、同女性が50%だったのに対し、子どものない若年既婚男性は39%、同女性は36%で、分析は中年層の「社会への要求の高さ」「個人意識の強さ」の根拠としている。
また、「現在と将来の不安事項」では、中年独身男女が「自分の健康」「親の介護」を選んだ割合が若年者より高かったことから、「自分に直接かかわることに不安を抱く傾向があり、結婚の意義を伝えることを推進する必要がある」などと結論づけている。記事の元となった一次情報がみつからないのだが(厚生労働省のホームページをみたが見つけられない。こういう情報こそ全て国民の前に晒すべきではないのか?)、この朝日の記事を見る限りでは、なんとも結論まずありきで「ためにするアンケート」という感じがある。
少子化の直接的な原因が子育て世代の「個人を強く意識する」戦略にあるという指摘自体はそのとおりだろう。
だが、そのような価値観に従うことは罪ではない。生物というのは「利己的に」生きるのが当たり前なのだ。種全体の利益のために自分の命を犠牲にする戦略をとる個体などどこにもない。生物の歴史は「利己的な」個体の振る舞いと環境とのマッチングという点から説明できる。ヒトの歴史も例外ではない。
非現実的な「道徳論」、「べき論」など何の役にも立たない。そのような「不自然」な議論など生物の本能の前には無力である。
それにしても産経新聞が同じネタでまたすごい記事を濫造してきそうだな。どんな奇抜な論理展開を見せてくれるか楽しみである。
本エントリーの初出:チャンネル北国TV (2004-08-15)
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