続:北海道での組替えダイズ栽培計画

| コメント(0) | トラックバック(0)

ここ数日ホットな話題となっている組み替えダイズ栽培計画について、富田氏も見解を公表した。

http://ch.kitaguni.tv/u/1181/%b2%ca%b3%d8/%b5%bb%bd%d1/0000130224.html を初めとしてこのブログでも何度か紹介した放送大学北海道学習センター所長 冨田 房男氏が、長沼町の組み替えダイズ商用栽培計画についてのコメントを日経バイオテクのメルマガに投稿していた。あいかわらず快刀乱麻を切る勢いでGMO反対に走る人々とくに北海道行政を批判している。

北海道農政部のスタンスについて

 特に北海道は、その経済基盤の50%以上をアグリビジネ(第一次産業などと言っても良いが、それよりも私は広い範囲を指す産業と位置づけている)に依存していながら、その実体を反映した政策をとっていないこと、また行政機関が採らなければならない公正、公平、平等など科学的裏付けのある施策をとらないことに憤慨し、その間違いを私は、指摘続けてきている。
国が科学的に判断したことを地方自治体がそれとは別の方向でガイドラインや条例を作成するとなると、国の科学的判断を打ち負かす科学的根拠が無ければならないが、今のところそのような根拠は全く示されていない。こんな状況でガイドラインや条例を楯に栽培農家に禁止を迫ったり、罰則を適用した場合、その法的根拠が希薄であり、訴えられたら勝てない可能性が高いことにも各自治体は目を向けるべきである。
北海道庁と地元農協は、宮井氏に計画中止を求めているか今後求めるつもりである。これにたいし宮井氏は当然ながら要請を拒否する構えである。さて、この「要請」が妥当なものといえるのか? 中止要請の論拠の一つは、北海道産農作物の安全イメージ低下が懸念されるという点にある。富田氏はこの「風評」面について以下のように論じている。
イメージで北海道産品を売り込むつもりらしいが、作物や食品が映画俳優やモデルと同じでよいはずがない。イメージ作戦の失敗はこれまでの表示問題などで良く分かっているはずだ。敢えてこれに依存しているとすれば北海道産品は、あっという間に売れなくなる。もっと客観的に示せる指標を作れと私は主張してきたが、全く無視されている。
富田氏の指摘は示唆に富んでいる。 確かにイメージのイイカゲンさには我々もこのところ嫌というほどニュースで接してきた。食品だけでなく、温泉の問題もあった。これらは主に「プラスイメージを持たれていた物が実はマイナス面をもっていたことが発覚した」という図式のものであったから、今回のダイズ問題とはベクトルが逆とも言える。しかしイメージ戦略の儚さ・危なっかしさをそれらの一連の事件から学ぶことが出来る。根拠を伴わないイメージに頼ることは、生産者にとっても消費者にとっても不幸な結果を招くことになるだろう。

誤った「風評」は正面から正さねばならない。農政部の仕事が道内の農業を守り育てることにあるのなら、根拠のない風評を批判し、正当性をアピールすることこそが仕事である。風評に迎合してどうするかということだ。それは農業者を、ひいては消費者を、暗黒時代の鎖に永久的に縛り付けることに他ならないだろう。

次に北海道新聞の記事を取り上げて次のように3点の反論を試みている(ここで槍玉にあげられている元記事は北海道新聞のwebサイトでは残念ながら発見できなかった)。

 北海道新聞は、「1」反対派は、安全性に強い懸念、2」賛成派は、計画推進に悪影響、「3」生産者は、作物の交雑」を心配を主張したいらしい。これに反論してみよう。
 1)ここでの安全性とは、食品としての安全性を意味すると思うが、これまで様々の場面で述べているように充分に食品としての安全性は検証されている。世界中でこの点は、はっきりと認めている。むしろ食品としての科学的検証がないのはこれまでの食品であり、新品種である。むろんそれだから今の食品が安全でないと言っているのではない。組換え食品が、食品の安全性をどう考えるべきかということを提起したものだ。
 2)計画推進に悪影響とは、何を意味するのか不明だ。条例を作る口実を与えるとでも言うのだろうか?むしろ何も規制がなかった時に、組換え大豆を試験栽培したが何も起こらなかった(これは、世界中で既に確認されている)ことを証明してくれたと思うべきだ。
 つまり、今行っている条例作りを前提として、国の決定を疑うのは間違いだと認識すべきだ。悪影響とは新聞社の勝手な解釈だ。(私の今回の分析では、道産のGM作物の栽培だけが認められても、何も変わりなく、仮に日本で開発されたものの栽培試験が認められても、手続きが面倒で誰も北海道で栽培試験をやる人はいません。よって、状態がこれ以上悪くなることは無いのですから、推進派は正々堂々と栽培を禁止するのに十分な科学的根拠がないという立場で頑張るべきです)
 3)大豆は、自家受粉植物である。自家受粉植物とは自家受粉が95%以上のものを言うのだ。また、2)で述べたように何も起こっていない。つまりありもしないことを大げさに言っているに過ぎない。もっと科学的なデータに基づいて言うべきだ。それでも心配なら、道立研究機関に試験をさせればよい。国立研究機関では70センチ離せばほとんど(0.1%以下)とのデータがある。そもそも安全なものがこの程度の交雑があることが問題になるとは思えない。生産者はイネのウルチとモチを隣り合わせに植えるようなことはやらない。このコメントは、プロである生産者をバカにするものだ。
この最後の指摘は、組み替えダイズの安全性に関しての科学的な根拠という点で重要だ。内容がかなり濃くなるので、後日くわしく纏めてみたいと思う。

参考までに、社説では北海道新聞は次のように述べている。概ねバランスの取れた主張だと私は思う。

北海道新聞の社説(10月7日) http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/backnumber.php3?&d=20041007&j=0032&k=200410076036

  • 風評被害を心配する周囲にも配慮し、理解を得る努力を重ねてもらいたい。
  • 栽培が予定されている大豆は、国の安全確認を受けたものである。安全性が確認されていない段階の試験栽培とは区別して、栽培のあり方を議論する冷静さも欲しい。
  • 遺伝子組み換え技術そのものを否定する姿勢は避けたい。多収性、耐病性などに優れた作物が開発される可能性を秘めており、将来の食糧危機を救う期待もある。 バイオテクノロジーを今後の産業の柱に育てようとしている北海道にとっては、とりわけ重要な分野だ。
  • 道は、組み換え作物の栽培を規制する「食に関する条例」(仮称)制定を目指しているが、研究の芽を摘み取らないよう十分な配慮が求められる。
【トラックバック】

本エントリーの初出:チャンネル北国TV (2004-10-09)

トラックバック(0)

トラックバックURL: /232

コメントする

このブログ記事について

このページは、kojidoiが2004年10月 9日 00:00に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「技の分類」です。

次のブログ記事は「交流分析」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

アーカイブ

Powered by Movable Type 5.01

2015年12月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
  • アクセス管理
    人気ブログランキング - testブログ あわせて読みたい

    アイテム

    • AropbKZCMAAk6mG.jpg
    • P1000323_crop.JPG
    • P1000343.JPG
    • P1000342.JPG
    • P1000335.JPG
    • IMG_0491.JPG
    • IMG_0487.JPG
    • IMG_0485.JPG
    • IMG_0483.JPG
    • P1000319.JPG