昨晩、近所のシネコンの深夜上映で「笑いの大学」を見た。
映画の概要は 公式ページ 参照。
何年か前に、西村雅彦・近藤正芳主演による舞台劇をNHKで放映していてたまたまそれを見たことがあった。それで私は三谷幸喜という人の名前を知った。
これは、検閲官である向坂という男の成長劇だといえるだろう。彼は最後の最後まで謹厳実直な姿勢を崩さないのだが、一方でいつのまにか喜劇台本にのめりこんでいく。若い脚本家である椿と相対しつつ、検閲をやっているのか台本の練り直しをやっているのか段段分からなくなっていく向坂のアンバランスさが観るものを笑わせる。だが結末において彼がついに本音を吐露するシーンは、実に泣かせるものだった。
舞台劇のほうは、大道具として面接室の机一つしかないシンプルなステージで、ほんとうに二人だけの芝居だった。さすがに映画になって、いろいろなところが拡張されていた。
まず「芝居小屋」とその周辺の情景が加わっていた。その風景が日を追うごとに微妙に変化していく。徐々に人々の服装が国民服に代わっていき、メロドラマの看板が姿を消していくのだ。また、向坂が劇場を訪れ、芝居をついに「初体験する」というシーンも加わった。 さらに「取調室の外の廊下」も加わった。それによってラストシーンは舞台劇よりさらにドラマチックになった。ただし、相対的に台詞回しのもっていた印象度は舞台劇より弱まったかもしれない。
しかしいずれにせよ、よく出来た魅力的な映画に仕上がっていた。観にいってよかったと思う。
本エントリーの初出:チャンネル北国TV (2004-11-25)
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