奥の院と対をなす真言宗の本拠地、「壇上伽藍」。
写真中央は根本大塔。昭和12年に建てられた鉄筋コンクリート製の華やかなお堂だ。お堂の中には立派な仏さんが五体鎮座しており、その周辺には多くの菩薩やお坊さんを描いた絵画が掲げてある。お堂全体が3Dの曼荼羅になっている。
せっかくだから仏様についてすこし勉強してみる。
まず 如来 と 菩薩の2クラスを理解せねばならない。
如来はもっとも位の高い仏であり、既に悟りを開いた存在である。仏教の開祖であり実在した人物がモデルになっているのがもちろん 釈迦如来 である。このほか、人が生まれる前 に過ごす所であるらしい「東方浄土」を支配する 薬師如来 と、死後の世界である「西方浄土」を支配する 阿弥陀如来 は重要である。また、密教において極めて重要なのが 大日如来 である。密教においてはあらゆる仏を超越した絶対的な存在である。釈迦ですら大日如来の徳の一部を具現化するワンオブゼムな仏に過ぎないのである。
菩薩はいまだに修行中の仏である。数が多いが、まず始めに覚えておかねばならないのは、将来を約束されたエリート菩薩である弥勒菩薩であろう。現在こそ低い身分に甘んじて いるが、何しろ釈迦如来の後継として将来には世界を背負ってたつ如来となることが約束されている。釣りバカ日誌における多胡氏のような役回りだ。
後継がいることからも推測できるとおり、釈迦如来も永遠不滅ではなく将来には死んでしまうと考えられている。その際に世界は大混乱に陥るとされ、そこで世界のあらゆる場所 を動き回って迷える人々を導き救済する大役をつとめることになるのが地蔵菩薩、すなわち道端によく立っている「お地蔵さま」に他ならない。地蔵菩薩は人間界だろうが地獄だ ろうがあらゆるところに出張って法力を行使することができる。なかなかのやり手である。
弥勒が如来に昇進するのは今から56億7千万年後だそうである。それまでの長い間、地蔵菩薩が釈迦代行をつとめるというのである。こんなに長い間大役を担うのだから、その まま2代目釈迦を襲名するのが順当なように思える。しかし、その席につくのはあくまで弥勒だというのだ。可哀想なお地蔵さま。どう逆立ちしても一種試験に合格して入省した キャリアの上には行けないノンキャリア組の公務員、あるいは東大法学部などを出た文系官僚に結局はウマイところは全部持って行かれる理系官僚みたいだ。弥勒はもう将来が保 証されているので人生設計に必死になる必要もない。修行と称して56億年もの長い期間をモラトリアムしてのんびり過ごすのである。なんとも割り切れない話ではないか。
本エントリーの初出:チャンネル北国TV (2005-07-13)
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