海の日で休日だという事実に土曜日に思い当たる。かくして急遽映画デーとなった今日、シネプレックスに出向いた。
「転校生」との梯子で映画「憑神」を見た。ラストシーンを除けばなかなかの佳作であった。
幕末。有能なのに巡り合わせが悪く不遇に甘んじている下級武士の男が主人公である。ただでさえ不遇なのに、あろうことか貧乏神・疫病神そして死神にまで取り憑かれる事になってしまう。
3人の神が順番に彼の前に現れるのだが、最初の二人のエピソードは作品世界に観客を馴染ませ、「宿替え」という重要概念を解らせるためのまあいわば序章であろう。三人目の死神とのエピソードこそが本題。前の二人、特に西田敏行演じる貧乏神の章は大笑いしながら見ていれば済むのだが、死神の章はだんだんシリアスな話の主題が見えてくるのである。死神(若干9歳の森迫永依という女の子が演じるのだ)は結局のところ「宿替え」を実行して彼に取りつくのをやめるのだが、そうして得た命を結局彼は間もなくあっけなく捨ててしまうのである。武士として生きる意味を追求した挙句、上野戦争の舞台となった寛永寺に出向いて滅びいく幕府と心中するという形で。
なんとおろかなとの感想もありえるだろう。なんでもう見るべきものもない徳川幕府に肩入れして死ななければならないのかと。だが、現代に置き換えてみれば、別所彦四郎みたいのはたくさんいるのではないか。100年後の人間が21世紀の男たち女たちの生き様を見たとき、結構同じような感想をいわれるのではないかという気がする。武士の一分が「正社員の一分」とかに変わっているだけでね。
そのように価値観を相対化した視点がもてない人だと、この映画を本当の意味では楽しめないかもしれないな。そういう人は前半の西田敏行の芸達者振りを堪能してお帰りくださいというところだろう。
どうでもよいことだが、神様が術を使い始めたシーンで地面が揺れだした(新潟地震の影響が当地にも及んだのだ)のには驚いた。
それにしても最後のシーンは余計!!!!
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