金メダルじゃなきゃだめなんですか？

まずは我らが石原慎太郎東京都知事の発言。いつもながらいい味出してます。その辺のご隠居ならこのレベルの発言でもいいんだろうけど、都知事のレベルじゃないね。

http://news.livedoor.com/article/detail/4615194/

「まあ、日本勢が不振であることは誰が見ても確かだと思いますね。でね、アスリートの世界、競技の世界ってのは、横並びってのは絶対あり得ないですよ。０・０１秒の差でも１位２位が決まるわけですよね。でね、横並びってのを是とする風潮てのは論外だと思うけど。わたしね、やっぱり選手たちがね、思ったより高く飛べない、思ったほど速く走れないのはね、重いものを背負ってないからなんだよ。国家ってものを背負ってないからね、結局高く飛べない、速く走れないと私は思いますね」

国家を背負わないと高く飛べないんだと。いつもながら彼の発想は180度方向が間違っている。

日本勢が「不振」なのは、そんな問題じゃない。選手が国を背負っていないからではなく、国が選手に期待してないからでしょ。だからモチベーションが上がらない。それ以前にオリンピック出場候補者となる競技者の頭数がそろわない。

http://www.asahi.com/olympics/columns/from_vancouver/TKY201002230298.html

日本はまだまだスポーツ後進国というしかない。五輪の期間中、国中が注目しメダルの数を要求される。選手が責任を感じるのは当然だが、ノルマを課せられているような感じにもなる。それまでの４年間のフォローを国やＪＯＣはきちんとしてきたのだろうか。

政府の事業仕分けが行われ、スポーツ予算は削られる方向になった。全体的な削減は仕方がないとしても、仕分けの仕方は適切だろうか。

例えばお隣の韓国はスポーツ先進国になった。国威発揚という特殊な事情があるにせよ、お金の使い方が違う。日本には国立スポーツ科学センターがある。韓国にも同じような施設がある。韓国ではそこに選手が集められ、招集された時点で、日当が出る。日本では利用するのに料金が発生する。韓国ではもし、メダルを取れば、ほぼ生涯が保証されるのに対し、日本の報奨金は多いとは言えない。

* 韓国＞日当が出る
* 日本＞利用料を支払わされる。

一事が万事これでは、厚い選手層の生成など望むべくもないだろう。まだ現役選手が残っているだけ奇跡といってもいいかもしれない。

石原レベルの連中はそういうことを見ずに、面倒な話は全部精神論で片付けようとする。表面的には切れのある発言に映るので、知能の低い市民たちがこれを支持して票を入れる。東京はこのようにして10年以上も馬鹿をさらしてきた。もうそろそろ民度の向上に本腰を入れて取り組むべきではないだろうか。

思ったようにメダルを取れていないのは日本だけではない。ロシアなどもソ連時代に比べれば目を覆う惨状で、担当大臣の更迭などという話まで出ているという。

開催国のカナダも当初は気炎を上げていた。しかし高い目標には届きそうもないようだ。

http://www.asahi.com/olympics/columns/from_vancouver/TKY201002260365.html

カナダ五輪委が宣言した「ＯＷＮ　ＴＨＥ　ＰＯＤＩＵＭ」というスローガンが、いま地元メディアをにぎわせている。「表彰台を独占せよ」と訳せばいいだろうか。大会前に掲げたメダル総数１位の目標が選手に過度な重圧をかけているという論調だ。

スローガンの野心的な言葉に隣の米国は驚いた。米紙「ウォールストリート・ジャーナル」は「五輪の歴史上、これほど露骨な主催国のスローガンはない」。こうした自己中心的な愛国心は「まるで米国のようだ」とちゃかした。

記事はこの後、まあ一位じゃなくても……という方向に話が進んでいる。少なくとも石原節よりは自然で健全な方向性だ。

頑張れば1番が可能だという前提のもと、それを目指して頑張るというのは素晴らしい。私としてもそれを否定する気は全くない。

だが、残念ながら1番にならなかったとき、1番にならなかったというだけでそれまでの活動の価値を全否定するのは賢くないと思う。その過程の中で得たものは何かあるはずだ。それを肯定的に評価していってこそ幸せになれるのではないか。